給食のをばさん
北大路 翼
「俳句」だけを愛し「俳句」だけに愛された北大路翼――新章開幕
給食調理員として働くことになった人気中年俳人が、すべての人々へお届けする圧巻の175句。
あらゆるものごとを全否定、全肯定し、生まれ変わった姿をさらけ出す最新俳句集。
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僕は僕が思ふ給食のをばちやんをこれから体験してくる。
歌舞伎町のチンピラがどんな「をばさん」になるのか自分でも楽しみだ――(「はじめに」より)
包丁を水に沈めて春惜しむ (四月二十一日)
ペスカトーレロッソじつとできない子 (五月二十四日)
麦味噌や昭和の夏は暑からず (六月二十二日)
夏痩せの肩をエプロンずり落ちて (七月十日)
名月をつくる身分となりにけり (九月二十九日)
ぽたーじゆのぽたぽたぽたと秋ふかむ (十月十九日)
鮭喰へば北が恋しくなりにけり (十一月六日)
沖縄のもづくに冬を教へたる (十二月十五日)
ビビンバの明るさだけの冬の昼 (一月二十四日)
手作りのゼリーに気泡日脚伸ぶ (二月七日)
鮫の味知つてゐるなり卒業す (三月十五日)
こんな愚かな自分が好きだし、僕には愚かさを笑ひにかへ、あたたかく受け入れてくれる俳句がある。
愚かな人間にこそ俳句は必要だ――(「あとがき」より)
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