角川財団学芸賞

  • 2022.01.12更新
    第19回 選考結果について
角川財団学芸賞とは 受賞者一覧

受賞のことば・選評

第12回角川財団学芸賞受賞
『戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか』(新潮社刊)
呉座勇一
【受賞者略歴】
呉座勇一(ござ ゆういち)
1980年、東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院人文社会系研究科研究員を経て、現在、東京大学大学院綜合文化研究科学術研究員。著書に、『一揆の原理――日本中世の一揆から現代のSNSまで』(洋泉社、2012年)、『日本中世の領主一揆』(思文閣出版、2014年)。

受賞のことば

呉座勇一

 先の大戦への反省から、戦後の日本史学界では戦争を忌避する「反戦平和主義」が議論の前提となった。たとえば蒙古襲来ならば、「外交交渉によって戦争を回避することはできなかったのか」という形で問いを立てるのである。一方で、革命を熱望する階級闘争史観の影響により、南北朝内乱や応仁の乱といった戦乱は、新興勢力が既存の秩序を打ち破る「下剋上」として肯定的に評価されたのだ。
 こうした戦争観の〝ねじれ〟をときほぐすことで、総括されぬまま店ざらしになっている戦後歴史学を捉え直す糸口がつかめるのではないか。それが執筆の動機だった。
 私は駆け出しの研究者で、本書もいわば〝中間報告〟のつもりで上梓した。昨年『一揆の原理』が候補になっただけでも驚いたのに、まさか栄えある角川財団学芸賞を受賞できるとは思いもよらなかった。おそらく〝伸び代〟があるはずと期待(錯覚?)されたのだろう。「これから精進するように」という叱咤激励と解釈して、謹んで頂戴したい。
 角川文化振興財団と選考委員の皆様に心より御礼申し上げる。


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