『日本禪宗史論集』
元東京大学教授玉村竹二氏の禅宗史研究論文の集大成で、多年にわたる論考のほとんど全てを収録。「制度」「人物」「建築」「講座概説」「学芸書蹟」「典籍」「随想小品」「教団」の各編からなり、わが国中世における禅林文化のはたした意義と役割が多面的に考察されている。その骨子は禅宗教団史とでもいうべきもので、鎌倉期に大陸から伝えられた禅宗が、南北朝期に地方に伝播していく過程が仔細に検討されている。氏はまた、禅林文化にも鋭い目を向けられ、著書『五山文学』『五山文学新集』の結実を見た。建築史の分野では円覚寺舎利殿移築についての研究が特に著名である。禅僧に関する論究も多く、法諱・道号・称号の分析、室町幕府の発給した告帖の分析等は、氏の切り開いた新しい領域といえよう。本書は、多方面にわたる史料の採集をもとに幅広く論及しつつ、禅林文化の全貌を明らかにした総合的研究書といえる。