『新稿 社寺参詣の社会経済史的研究』
著者は、昭和三十九年の『社寺参詣の社会経済史的研究』で、古代から近世末までを著述されたが、今回、古代・中世の部分には新史料を加え、特に近世部分は大部分書き改め、分量も全体の半分を占めている。一般庶民の社寺参詣の諸問題を、交通史の観点から全国主要社寺の史料を駆使して新しくまとめた。前半、古代・中世の部分は、貴族社会から始まった社寺参詣が、中世には民衆にまで広がり発展し、また交通諸条件の発達などから、旅が容易となり、社寺や社会の受入れ体制も整ったが、なお信仰心の濃いものであったとしている。後半、七○○貢は、近世における社寺参詣の部分で、農民の自立、商人の経済的安定、婦女子の参加、参詣を援助する講や頼母子等の共同体的結合が広く普及したことにより、社寺参詣が遊楽化へと移行する諸条件を述べている。巻末五〇頁に及ぶ索引は利用者には一段と便宜である。