『平安・鎌倉時代散逸物語の研究』
和歌、中世文学の研究者として知られる著者の論集である。本書は三章をもって構成されており、第一章では、研究の概観とその意義、また著者の研究に対する考え方・姿勢などが述べられ、それを導入部として、第二章の各論に展開する。第二章は十二節からなり、「霞隔つる中務宮」「玉藻に遊ぶ権大納言」「浦風にまがふ琴の声」「かばね尋ぬる宮」「朝倉」「みづから悔ゆる」「みかはにさける」「心高き春宮宣旨」「あまのかるも」「うきなみ」「しづくに濁る」「風につれなき」の各物語が採りあげられている。第三章は資料研究である。散逸物語研究に欠かせない資料として、「六条斎院物語歌合」「物語二百番歌合」「無名草子」「風葉和歌集」があげられ、詳細な考察が加えられている。本書は既発表の論文が中心をなしているが、第一章他五編が新たに書き下ろされている。