句集 残影
抜井 諒一
こんなにも桜と人とゐて独り
過ぎ去りゆく日々の翳りと残影を寂寞の深淵から掬い上げた精選の331句。
前作『金色』は第7回千葉県俳句大賞、第18回日本詩歌句随筆評論大賞「俳句部門」大賞、第5回俳句大学大賞をそれぞれ受賞。
新人の殻を破る堂々の句群をそろえた5年ぶり待望の第3句集。
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【自選12句】
白靴の知らざる森の暗さかな
玉虫を逃がして授業再開す
粒ほどの花にはじまる野路の秋
秋蝶を追ふ追ひついてしまひたる
団欒も夜業も同じ灯の中に
ロープウェー銀河の中に止まりけり
ぱつちりと切符に鋏入りて冬
冬ぬくし小さくなつて子と話す
枯れ切つて完成形となりにけり
実をぜんぶ落として春を待つばかり
土の色ぼやけてをりぬ落椿
新社員がぶがぶ水を飲んでをり
装丁:吉原遠藤