蛇笏賞・迢空賞とは

迢空賞・蛇笏賞設立のことば

『短歌』『俳句』昭和42年4月号に掲載

 角川書店は伝統的日本詩歌の興隆に力をいたすべく、綜合雑誌「短歌」「俳句」を発刊し、ひろく歌壇・俳壇の公器として、作品活動・評論・研究に多くの場を提供し、つねに清新の風をおこすべく努力してきた。近代短歌・俳句のいとなみは誠に驚くべきで、日本文学史上、かつてなきほどの高まりを見せており、綜合二誌を発刊する小社としても、深く喜びとするところである。
 しかるに、歌人俳人の生涯にわたる創作・研究の多くは、その彫心鏤骨の努力に比して、報わるるところ、はなはだ少ないのもまた衆知のとおりである。角川書店はさきに角川短歌賞・俳句賞を設定し、毎年新人の発掘顕彰に努力して来たが、このたび短歌・俳句界の最高の業績をたたえる大賞の設立にあたつて、短歌部門を「迢空賞」・俳句部門を「蛇笏賞」と名づけ、日本詩歌の興隆に力をつくされた釈迢空(折口信夫)先生・飯田蛇笏先生の遺徳を敬慕し、世世に語り継ぎ、日本詩歌の振興に一層の努力を期すものである。

※両賞は、第10回(昭和51年)から、角川文化振興財団の主催により運営されています。

選考対象

両賞とも前年の1月から12月の間に刊行された句集および歌集を対象とします。

表彰

表彰は賞状・記念品ならびに副賞100万円。授賞の決定・発表は4月、賞の贈呈式と祝賞会を6月に開催いたしております。

選考委員※五十音順

蛇笏賞選考委員

宇多喜代子・片山由美子・齋藤愼爾・長谷川櫂

迢空賞選考委員

岡野弘彦・佐佐木幸綱・高野公彦・馬場あき子

飯田蛇笏・釈迢空紹介

飯田蛇笏

飯田蛇笏(いいだ だこつ)

明治18年(1885)4月〜昭和37年(1962)10月。
山梨県境川村生まれ。早稲田大学中退。本名・武治(たけはる)。別号・山廬(さんろ)。
山梨の大地主・名家の長男という桎梏のなかで早くから文芸を志し、上京。早大英文科に入学し早稲田吟社の句会に参加、「ホトトギス」にも投句した。
その後、知遇を得ていた虚子の俳壇からの「引退」とほぼ同期間、蛇笏もまた句から遠ざかり、帰郷。だが、故郷での「田園生活」のなかで虚子の「俳壇復帰」を知り、俳句に還る。大正6年、「キララ」主宰(後に「雲母」と改題)。昭和7年、47歳で第一句集『山廬集』を出版。
山本健吉はその『現代俳句』で蛇笏を、「簡勁蒼古重厚とも言うべき句風」をうちたてたと評し、「これは大正・昭和の俳諧史において、一つの偉業として顧みられるであろう。甲斐の山中にあって孜々として磨かれた彼の句風は、現代では文字どおり孤高である。(中略)その気魄にみちた格調の荘重さ、個性の異常な濃厚さは、蛇笏調として俳諧史上に独歩している」と記した。
句集に、『霊芝』『山響集』『白嶽』『心像』『春蘭』『雪峡』『家郷の霧』『椿花集』があり、その句文は、『飯田蛇笏全句集』(昭和46年)、『新編飯田蛇笏全句集』(昭和60年)、「飯田蛇笏集成」(全7巻、平成6〜7年。以上、いずれも角川書店刊)にまとめられている。

釈迢空

釈 迢空(しゃく ちょうくう)

明治20年(1887)2月〜昭和28年(1953)9月。
大阪生まれ。國學院大學卒業。歌人、詩人、古代学・民俗学者。國學院大學教授、慶應義塾大学教授。文学博士。本名・折口信夫(おりくち しのぶ)。
國學院のころから、子規庵の東京短歌会に加わり、さらに「アララギ」に拠って歌を詠んだが、大正14年には超結社誌「日光」に参加。翌15年、第一歌集『海やまのあひだ』を刊行。
大学卒業後、柳田国男に出合い、以後民俗学においては柳田を師とした。國學院、慶應義塾で教鞭をとり、その間に、『国文学史の発生』『古代研究・民俗学編』『古代研究・国文学編』『万葉集研究』などを発表。
歌集に、『春のことぶれ』『水の上』『遠やまひこ』『倭をぐな』があり、詩集に『古代感愛集』、小説『死者の書』がある。
その生涯における著作は、『折口信夫全集』(全31巻、別巻1。昭和29〜34年)としてまとめられ、また『日本文学史ノート』『日本芸能史ノート』等を含む『折口信夫全集 ノート編』(全18巻、別巻1。昭和45〜49年)が刊行されている(いずれも中央公論社刊。その後数次の全集刊行あり)。

受賞者一覧

蛇笏賞迢空賞
第1回
(昭和42年)
皆吉爽雨『三露』他吉野秀雄『病室の牡丹』他
第2回
(昭和43年)
加藤楸邨『まぼろしの鹿』他
秋元不死男『万座』他
鹿児島寿蔵『故郷の灯』他
第3回
(昭和44年)
大野林火『潺潺集』他近藤芳美『黒豹』他
第4回
(昭和45年)
福田蓼汀『秋風挽歌』他加藤克巳『球体』他
第5回
(昭和46年)
平畑静塔『壷国』他
右城暮石『上下』他
葛原妙子『朱靈』他
第6回
(昭和47年)
安住 敦『午前午後』他前川佐美雄『白木黒木』他
第7回
(昭和48年)
阿波野青畝『甲子園』他
松村蒼石『雪』他
香川 進『甲虫村落』他
岡野弘彦『滄浪歌』他
第8回
(昭和49年)
百合山羽公『寒雁』他田谷 鋭『水晶の座』他
第9回
(昭和50年)
石川桂郎『高蘆』以後の作品上田三四二『湧井』他
第10回
(昭和51年)
相生垣瓜人『明治草』他宮 柊二『獨石馬』他
第11回
(昭和52年)
山口草堂『四季蕭嘯』齋藤 史『ひたくれなゐ』
第12回
(昭和53年)
阿部みどり女『月下美人』前 登志夫『繩文紀』
第13回
(昭和54年)
細見綾子『曼陀羅』玉城 徹『われら地上に』
第14回
(昭和55年)
斎藤 玄『雁道』生方たつゑ『野分のやうに』
窪田章一郎『素心臘梅』
第15回
(昭和56年)
石原舟月『雨情』前田 透『冬すでに過ぐ』
第16回
(昭和57年)
瀧 春一『花石榴』大西民子『風水』
武川忠一『秋照』
第17回
(昭和58年)
柴田白葉女『月の笛』
村越化石『端坐』
岡井 隆『禁忌と好色』
第18回
(昭和59年)
橋 ■(門に月)石『和栲』佐藤佐太郎『星宿』
島田修二『渚の日日』
第19回
(昭和60年)
能村登四郎『天上華』山中智恵子『星肆』
第20回
(昭和61年)
長谷川双魚『ひとつとや』馬場あき子『葡萄唐草』
第21回
(昭和62年)
森 澄雄『四遠』岡部文夫『雪天』
第22回
(昭和63年)
(該当作なし)吉田正俊『朝の霧』
第23回
(平成元年)
三橋敏雄『疊の上』塚本邦雄『不變律』
第24回
(平成2年)
角川春樹『花咲爺』(該当作なし)
第25回
(平成3年)
(該当作なし)安永蕗子『冬麗』
第26回
(平成4年)
桂 信子『樹影』森岡貞香『百乳文』
第27回
(平成5年)
佐藤鬼房『瀬頭』(該当作なし)
第28回
(平成6年)
中村苑子『吟遊』佐佐木幸綱『瀧の時間』
第29回
(平成7年)
鈴木六林男『雨の時代』篠 弘『至福の旅びと』
第30回
(平成8年)
沢木欣一『白鳥』(該当作なし)
第31回
(平成9年)
飯島晴子『儚々』富小路禎子『不穏の華』
第32回
(平成10年)
成田千空『白光』清水房雄『旻天何人吟』
第33回
(平成11年)
鈴木真砂女『紫木蓮』尾崎左永子『夕霧峠』
第34回
(平成12年)
津田清子『無方』春日井建『白雨』・『友の書』
第35回
(平成13年)
宇多喜代子『象』高野公彦『水苑』
第36回
(平成14年)
金子兜太『東国抄』竹山 広『射禱』
(『竹山広全歌集』収録)
第37回
(平成15年)
草間時彦『瀧の音』岡部桂一郎『一点鐘』
第38回
(平成16年)
福田甲子雄『草虱』永田和宏『風位』
第39回
(平成17年)
鷲谷七菜子『晨鐘』小池 光『時のめぐりに』
第40回
(平成18年)
後藤比奈夫『めんない千鳥』岩田 正『泡も一途』
小島ゆかり『憂春』
第41回
(平成19年)
岡本 眸『午後の椅子』栗木京子『けむり水晶』
第42回
(平成20年)
鷹羽狩行『十五峯』伊藤一彦『微笑の空』
第43回
(平成21年)
廣瀬直人『風の空』石川不二子『ゆきあひの空』
河野裕子『母系』
第44回
(平成22年)
眞鍋呉夫『月魄』 坂井修一『望楼の春』
第45回
(平成23年)
黒田杏子『日光月光』 島田修三『蓬歳断想録』
第46回
(平成24年)
澁谷道『澁谷道俳句集成』 渡辺松男『蝶』
第47回
(平成25年)
文挟夫佐恵『白駒』 米川千嘉子『あやはべる』
第48回
(平成26年)
高野ムツオ『萬の翅』
深見けん二『菫濃く』
玉井清弘『屋嶋』
第49回
(平成27年)
大峯あきら『短夜』 (該当作なし)
第50回
(平成28年)
矢島渚男『冬青集』 大島史洋『ふくろう』