「所感」阿波野青畝
蛇笏賞授賞の知らせは有りがたく素直に承つた。
推薦者たちの好意にそむいてはいけないと思つているからである。
推薦の理由を詳しく知らないのだけれども、俳句は伝統を忘れてはならない直感の詩であることと、つねに創造されるものであること、その上に日本の言葉を純粋に美しく使つてしかも作意を的確に表現しなくてはならぬというふだんからの私の主張が是認されたと自分なりに解釈したのであつて、その趣旨に添うように今後は一層の砕身鏤骨をつくす責任を感じている私である。
なお私ごとき老輩よりも、今活躍ざかりの新人が蛇笏賞を奪うべく真剣に鍛錬努力してもらうよう念願する。