眞壁 仁
隣接分野の成果である拙著を授賞作に選んでいただき、心底から驚いています。無名な著者の作品に歴史学研究における意義を見いだし、評価してくださった選考委員の先生方のご決断に深く感謝申し上げます。本研究は、対象とした儒者の「知的世界」を再現するため、手探りで着手した各地の史料群調査に始まります。その作業が思いもかけず、幕末期にいたる対外政策形成過程への、幕府儒者の参与の一端を明かすことにつながりました。政治学においても中心から離れた周辺の研究ゆえ、まさしく大学院時代の先生方や関係者のご理解とご支援の賜物です。ぜひともこれを機に、拙著で扱った幕府儒者と学問所により広く光があてられ、関連諸領域の史料にもとづいた討究が進展することを願ってやみません。なお研鑽の途上にあり、今後もご批判を仰ぎつつ、周縁からの一挑戦者として山積する課題に応えて参りたいと思います。