『絵巻物詞書の研究』
国文学と美術のはざまに埋もれていた絵巻物の詞書を研究対象に採りあげ、国文学の分野から文献学的手法をもって考察を加えた論集。十章をもって構成されるが、第一章から第五章までは「源氏物語絵巻」に関する論考である。以下「信貴山縁起絵巻の詞書についての覚書」「平家公達草紙と藤原隆房――青海波の段の出典を中心として――」「豊明絵草子と『とはずがたり』」「直幹申文絵巻の詞書とその成立の背景」の各章が続き、第十章の「絵巻物放――「絵巻物」という呼称について――」をもって締めくくる。絵巻物詞書本文が、物語作品本文と密接に関りあっていることを具体的に証明した本書の意義は極めて大きい。収録の諸論は著者の三十年にも及ばんとする研究の成果であるが、本書を編むにあたり、大幅な加筆訂正を行っている。